つきのしじょう
月の詩情

冒頭文

昔は多くの詩人たちが、月を題材にして詩を作つた。支那では李白や白楽天やが、特に月の詩人として有名だが、日本では西行や芭蕉を初め、もつと多くの詩人等が月を歌つた。西洋でも、Moonlight の月光を歌つた詩は、東洋に劣らないほど沢山ある。かうした多くの月の詩篇は、すべて皆その情操に、悲しい音楽を聴く時のやうな、無限のノスタルヂアが本質して居り、多くは失恋や孤独の悲哀を、その抒情の背景に揺曳させてゐ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆30 宙
  • 作品社
  • 1985(昭和60)年4月25日