ろうねんとじんせい
老年と人生

冒頭文

老いて生きるということは醜いことだ。自分は少年の時、二十七、八歳まで生きていて、三十歳になったら死のうと思った。だがいよいよ三十歳になったら、せめて四十歳までは生きたいと思った。それが既に四十歳を過ぎた今となっても、いまだ死なずにいる自分を見ると、我ながら浅ましい思いがすると、堀口大学(ほりぐちだいがく)君がその随筆集『季節と詩心』の中で書いているが、僕も全く同じことを考えながら、今日の日まで生き

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 猫町 他十七篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1995(平成)年5月16日