にっしんせんそういぶん(はらだじゅうきちのゆめ)
日清戦争異聞(原田重吉の夢)

冒頭文

上 日清(にっしん)戦争が始まった。「支那も昔は聖賢の教ありつる国」で、孔孟(こうもう)の生れた中華であったが、今は暴逆無道の野蛮国であるから、よろしく膺懲(ようちょう)すべしという歌が流行(はや)った。月琴(げっきん)の師匠の家へ石が投げられた、明笛(みんてき)を吹く青年等は非国民として擲(なぐ)られた。改良剣舞の娘たちは、赤き襷(たすき)に鉢巻(はちまき)をして、「品川乗出す吾妻艦(

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 猫町 他十七篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1995(平成7)年5月16日第1刷発行