そうていのいぎ
装幀の意義

冒頭文

書物に於ける装幀の趣味は、絵画に於ける額縁や表装と同じく、一つの明白な芸術の「続き」ではないか。彼の画面に対して、あんなにも透視的の奥行きをあたへたり、適度の明暗を反映させたり、よつて以てそれを空間から切りぬき、一つの落付きある完成の気分をそへる額縁に対して、どんな画家も無関心でゐることができないだらう。同じやうに我等の書物に於ける装幀——それは内容の思想を感覚上の趣味によつて象徴し、色や、影や、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻87 装丁
  • 作品社
  • 1998(平成10)年5月25日