りりょう
李陵

冒頭文

一 漢(かん)の武帝(ぶてい)の天漢(てんかん)二年秋九月、騎都尉(きとい)・李陵(りりょう)は歩卒五千を率い、辺塞遮虜鄣(へんさいしゃりょしょう)を発して北へ向かった。阿爾泰(アルタイ)山脈の東南端が戈壁沙漠(ゴビさばく)に没せんとする辺の磽确(こうかく)たる丘陵地帯を縫って北行すること三十日。朔風(さくふう)は戎衣(じゅうい)を吹いて寒く、いかにも万里孤軍来たるの感が深い。漠北(ばく

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 李陵・山月記・弟子・名人伝
  • 角川文庫、角川書店
  • 1968(昭和43)年9月10日改版