しまでをかたる
死までを語る

冒頭文

自叙伝    一 大草実君が 「直木さん、九月号から一つ、前半生記と云うような物を、書いてくれませんか」 と云ってきた。私は、今年四十二年六ヶ月だから「前半生」と同一年月、後半世も、生き長らえるものなら、私は八十五歳まで死なぬ事になる。これは多分、編輯(へんしゅう)局で、青年達が 「直木も、そう長くは無いらしいから、今の内に、前半生記みたいなものを、書かしては何(ど)うだ

文字遣い

新字新仮名

初出

「話」1933(昭和8)年9月号~1934(昭和9)年3月号

底本

  • 直木三十五作品集
  • 文藝春秋
  • 1989(平成元)年2月15日