さんにんのそうまだいさく
三人の相馬大作

冒頭文

一 「何うも早(は)や——いや早や、さて早や、おさて早や、早野勘平、早駕(はやかご)で、早や差しかかる御城口——」 お終いの方は、義太夫節の口調になって、首を振りながら 「何うも、早や、奥州の食物の拙(まず)いのには参るて」 赤湯へ入ろうとする街道筋であったが、人通りが少かった。侍は、こう独り言をいいながら 「早や、暮れかかる入相(いりあい)の」 と、口吟(くちずさ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 直木三十五作品集
  • 文藝春秋
  • 1989(平成元)年2月15日