一 池水に夜な夜な影は映れども 水も濁らず月も汚れず はなはだ面白い歌である。しかし、—— 池水に夜な夜な映る月影の 水は濁れど影の汚れぬ としたら——私は松葉屋瀬川を、近世名妓伝の第一に持って行ってもいいと思う。 この作は、浅草再法庵(さいほうあん)に、行(おこな)い澄ましていた、元吉原松葉屋の抱え瀬川の作であって、庵(いおり)の壁に書い