どうとくのかんねん
道徳の観念

冒頭文

第一章 道徳に関する通俗常識的観念 道徳の問題を持ち出す際、いつも邪魔になるものは、道徳に関する世間の通俗常識である。ここで通俗常識というのは、常識があるとか常識がないとかいう、ああした人間の共通な生活必需観念の謂ではなくて、却って世間の人がごく便宜的に大まかに粗雑に振り回している処の、出来合いの観念のことを云うのであるが、この意味に於ける通俗常識は、事物を少し細かく検討しようとする時に、大

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 戸坂潤全集 第四巻
  • 勁草書房
  • 1966(昭和41)年7月20日