あらじょたい
新世帯

冒頭文

一 新吉(しんきち)がお作(さく)を迎えたのは、新吉が二十五、お作が二十の時、今からちょうど四年前の冬であった。 十四の時豪商の立志伝や何かで、少年の過敏な頭脳(あたま)を刺戟(しげき)され、東京へ飛び出してから十一年間、新川(しんかわ)の酒問屋で、傍目(わきめ)もふらず滅茶苦茶(めっちゃくちゃ)に働いた。表町(おもてちょう)で小さい家(いえ)を借りて、酒に醤油(しょうゆ)、薪

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の文学 9 徳田秋声(一)
  • 中央公論社
  • 1967(昭和42)年9月5日