かるいざわ
軽井沢

冒頭文

十五年ほど前の夏休みに松原湖へ遊びに行った帰りの汽車を軽井沢でおり、ひと汽車だけの時間を利用してこの付近を歩いたことがあった。その時の記憶と今度行って見た軽井沢とで、目についた相違はと言えば、機関車の動力が電気になっていること、停車場前に客待ちのリクショウメンがいなくなって、そのかわりに自動車とバスと、それからいろいろな名前のホテルの制帽を着た、丁寧でいばっている客引きの数が多いことぐらいである。

文字遣い

新字新仮名

初出

「経済往来」1933年6月

底本

  • 日本随筆紀行 第一一巻 長野 雲白く山なみ遙か
  • 作品社
  • 1986(昭和61)年7月10日