もくれん
木蓮

冒頭文

白木蓮は花が咲いてしまつてから葉が出る。その若葉の出はじめには実に鮮かに明るい浅緑色をしてゐて、それが合掌したやうな形で中天に向つて延びて行く。丁度緑の焔をあげて燃ゆる小蝋燭を点しつらねたやうにも見える。 紫木蓮は若葉の賑かなイルミネーションの中から派手な花を咲かせる。濃い暗い稍(やや)冷たい紫の莟(つぼみ)が破れ開いて、中からほんのり暖かい薄紫の陽炎(かげろう)が燃え出る。さうして花の

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 花の名随筆4 四月の花
  • 作品社
  • 1999(平成11)年3月10日