とざんのあさ
登山の朝

冒頭文

八月一日はブンデスタークだ、スウィス開国の記念日である。 二階の寝室で目ざましがチリチリ鳴り出した、腕時計の針はちょうど午前一時を示している、いぎたなく寝込んでしまった近藤君をたたき起こして、隣の室に出ると、上からガイドの連中が降りて来た。外は、山稜にたち切られた空に星が冷たくまたたいて、風はないが非常に寒い。入口の水たまりは、むろん、厚く凍って歯をみがくどころの騒ぎではない。簡単な食事

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆10 山
  • 作品社
  • 1983(昭和58)年6月25日