ふとん
蒲団

冒頭文

一 小石川の切支丹坂(きりしたんざか)から極楽水(ごくらくすい)に出る道のだらだら坂を下りようとして渠(かれ)は考えた。「これで自分と彼女との関係は一段落を告げた。三十六にもなって、子供も三人あって、あんなことを考えたかと思うと、馬鹿々々しくなる。けれど……けれど……本当にこれが事実だろうか。あれだけの愛情を自身に注いだのは単に愛情としてのみで、恋ではなかったろうか」 数多い感

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 蒲団・重右衛門の最後
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1952(昭和27)年3月15日