いなかきょうし
田舎教師

冒頭文

一 四里の道は長かった。その間に青縞(あおじま)の市(いち)のたつ羽生(はにゅう)の町があった。田圃(たんぼ)にはげんげが咲き、豪家(ごうか)の垣からは八重桜が散りこぼれた。赤い蹴出(けだ)しを出した田舎(いなか)の姐(ねえ)さんがおりおり通った。 羽生からは車に乗った。母親が徹夜(てつや)して縫ってくれた木綿(もめん)の三紋(みつもん)の羽織に新調のメリンスの兵児帯(へこおび)、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 田舎教師 他一編
  • 旺文社文庫、旺文社
  • 1966(昭和41)年8月10日