馬子才(ばしさい)は順天(じゅんてん)の人であった。その家は代々菊が好きであったが、馬子才に至ってからもっとも甚しく、佳い種があるということを聞くときっと買った。それには千里を遠しとせずして出かけて往くという有様であった。 ある日、金陵の客が来て馬の家に泊ったが、その客が、 「自分のいとこの家に、佳い菊が一つあるが、それは北の方にはないものだ」 と言った。馬はひどく喜んで、す