ちくせい
竹青

冒頭文

魚容(ぎょよう)という秀才があった。湖南の人であったが、この話をした者が忘れていたから郡や村の名は解らない。ただ家が極めて貧乏で、文官試験に落第して帰っている途中で旅費が尽きてしまった。それでも人に物を乞い歩くのは羞かしくてできない。ひもじくなって歩かれないようになったので、暫く休むつもりで呉王廟の中へ入って往った。そこは洞庭のうちになった楚江の富池鎮(ふうちちん)であった。呉王廟は三国時代の呉の

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 中国の怪談(二)
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1987(昭和62)年8月4日