あほう
阿宝

冒頭文

粤西(えっせい)に孫子楚(そんしそ)という名士があった。枝指(むつゆび)のうえに何所(どこ)かにぼんやりしたところがあったから、よく人にかつがれた。その孫は他所(よそ)へ往って歌妓(げいしゃ)でもいると、遠くから見ただけで逃げて帰った。その事情を知ったものがうまくこしらえて伴(つ)れてきて、歌妓をそばへやってなれなれしくでもさすと、頸(くび)まで赧(あか)くして、汗を流してこまった。悪戯者(いたず

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 中国の怪談(二)
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1987(昭和62)年8月4日