れんこう
蓮香

冒頭文

桑生(そうせい)は泝州(そしゅう)の生れであって、名は暁(ぎょう)、字(あざな)は子明(しめい)、少(おさな)い時に両親に死別れて紅花埠(こうかほ)という所に下宿していた。この桑は生れつき静かなやわらぎのある生活を喜ぶ男で、東隣の家へ往って食事をする他は、自分の座にきちんと坐っていた。あの日(ママ)、東隣にいる男が来て冗談に言った。 「君は独りいるが、鬼(ゆうれい)や狐はこわくないのかい」

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 中国の怪談(二)
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1987(昭和62)年8月4日