しゅり
種梨

冒頭文

村に一人の男があって梨を市(まち)に売りに往ったが、すこぶる甘いうえに芳(におい)もいいので貴(たか)い値で売れた。破れた頭巾をかむり、破れた綿入をきた一人の道士が有(あ)って、その梨を積んでいる車の前へ来て、 「一つおくれ」 と言った。村の男は、 「だめだよ」 と言って叱ったが道士は動かなかった。村の男は怒って、 「この乞食坊主、とっとと往かないと、ひどい目に逢わす

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 中国の怪談(二)
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1987(昭和62)年8月4日