支那の万暦(まんれき)年中、毘陵(びりょう)に猿曳(さるひき)の乞児(こじき)があって、日々一疋(ぴき)の猴(さる)を伴(つ)れて、街坊(まち)に往き、それに技をさして銭を貰っていたが、数年の後にその金が集まって五六両になった。その乞児は某(ある)日知合(しりあい)の乞児といっしょに酒を飲んだが、酔って蓄えている金の事を誇り顔に話した。相手の乞児はそれを聞くと、急に悪心を起して酒の中へ毒を入れて飲