こえん
虎媛

冒頭文

明(みん)の末の話である。中州(ちゅうしゅう)に焦鼎(しょうてい)という書生があって、友達といっしょに汴(べん)の上流(かわかみ)へ往ったが、そのうちに清明(せいめい)の季節となった。その日は家々へ墓参をする日であるから、若い男達はその日を待ちかねていて、外へ出る若い女達を見て歩いた。焦生も友達といっしょに外へ出る若い女を見ながら歩いていたが、人家はずれの広場に人だかりがしているので、何事だろうと

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 中国の怪談(二)
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1987(昭和62)年8月4日