杜陽(とよう)と僕(げなん)の二人は山道にかかっていた。足がかりのない山腹の巌(いわ)から巌へ木をわたしてしつらえた桟道(かけはし)には、ところどころ深い壑底(たにそこ)の覗かれる穴が開いていて魂をひやひやさした。その壑底には巨木が森々と茂っていて、それが吹きあげる風に枝葉をゆうらりゆらりと動かすのが幽(かすか)に見えた。 壑の前方(むこう)の峰の凹みに陽が落ちかけていた。情熱のなくなっ