しんようどうき
申陽洞記

冒頭文

元の天暦年間のことであった。隴西(ろうせい)に李生(りせい)という若い男があった。名は徳逢(とくほう)、年は二十五、剛胆な生れで、馬に騎(の)り、弓を射るのが得意であったが生産を事としないので、郷党の排斥を受けて、何人(たれ)も相手になってくれる者がない。しかたなしに父の友達で桂州の監郡をしている者があるので、その人に依って身を立てようと思って、はるばると桂州へ往ってみると、折角頼みにしていた人が

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 中国の怪談(一)
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1987(昭和62)年5月6日