元の末に方国珍(ほうこくちん)という者が浙東(せつとう)の地に割拠すると、毎年正月十五日の上元の夜から五日間、明州で燈籠を点(つ)けさしたので、城内の者はそれを観て一晩中遊び戯れた。 それは至正庚子(しせいこうし)の歳に当る上元の夜のことであった。家々の簷(のき)に掲げた燈籠に明るい月が射して、その燈は微赤く滲んだようにぼんやりとなって見えた。喬生(きょうせい)も自分の家の門口へ立って、