唐の代宗帝(だいそうてい)の広徳年間の事であった。孫恪(そんかく)という若い貧しい男があって、それが洛陽にある魏土地(きとち)という処へ遊びに往った。遊びに往ったといっても、それは物見遊山(ものみゆさん)のためでなく、漂白して往ったもののように思われる。ところで、この魏土地に女主人で袁(えん)を姓とする豪家があった。孫恪は別に目的もなかったが、その前を通りかかったので、ちょっとした好奇心から覗いて