李汾(りふん)は山水が好きで四明山(しめいざん)にいた。山の下に張という大百姓の家があって、たくさんの豕(ぶた)などを飼ってあった。永和の末であった。ちょうど秋の夜で、中秋の月が綺麗であるから、李汾は庭前(にわさき)を歩いた後に、琴を弾いていると、外の方で琴に感心しているような人の声がした。李汾は夜更けにこんな処へ何人(だれ)が来たろうと思って、 「何人だね、この夜更けにやってきたのは」