きつねとたぬき
狐と狸

冒頭文

燕(えん)の恵王(けいおう)の墓の上に、一疋の狐と一疋の狸が棲んでいた。二疋とも千余年を経た妖獣であったが、晋の司空(しくう)張華(ちょうか)の博学多才であることを知って、それをへこますつもりで、少年書生に化けて、馬に乗って出て往こうとすると、華表神(かひょうじん)が呼び止めて、 「君達はどこへ往くのか」 と聞いた。華表神とは墓の前にある鳥居の神である。狸は華表神の問いに答えて、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 中国の怪談(一)
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1987(昭和62)年5月6日