とばくのふさい
賭博の負債

冒頭文

徳化県(とくかけん)の県令をしていた張(ちょう)という男は、任期が満ちたのでたくさんの奴隷(どれい)を伴(つ)れ、悪いことをして蒐めた莫大な金銀財宝を小荷駄にして都の方へ帰っていた。 華陰(かいん)へきた時、先発の奴僕(げなん)どもは豚を殺し羊を炙(あぶ)って、主人の張の着くのを待っていた。黄いろな服を着た男がどこからきたともなしに入ってきて、御馳走のかまえをしてある処へ坐った。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 中国の怪談(一)
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1987(昭和62)年5月6日