徳化県(とくかけん)の県令をしていた張(ちょう)という男は、任期が満ちたのでたくさんの奴隷(どれい)を伴(つ)れ、悪いことをして蒐めた莫大な金銀財宝を小荷駄にして都の方へ帰っていた。 華陰(かいん)へきた時、先発の奴僕(げなん)どもは豚を殺し羊を炙(あぶ)って、主人の張の着くのを待っていた。黄いろな服を着た男がどこからきたともなしに入ってきて、御馳走のかまえをしてある処へ坐った。