趙顔(ちょうがん)という少年が南陽の平原で麦の実を割っていると、一人の旅人がとおりかかった。旅人は管輅(かんらく)という未来と過去の判る人であった。その旅人は少年の顔を見て、 「お前さんは、なんという名だ、気の毒なことだ」 と言った。少年は気になるので麦を割ることを止めて訊いた。 「なにが気の毒ですか、私は趙顔というのですが」 「そうかな、お前さんは、二十歳(はたち)を過ぎない