がまのち
蟇の血

冒頭文

Ⅰ 三島(みしま)讓(じょう)は先輩の家を出た。まだ雨が残っているような雨雲が空いちめんに流れている晩で、暗いうえに雨水を含んだ地べたがじくじくしていて、はねあがるようで早くは歩けなかった。そのうえ山の手の場末(ばすえ)の町であるから十時を打って間もないのに、両側の人家はもう寝てしまってひっそりとしているので、非常に路(みち)が遠いように思われてくる。で、車があるなら電車まで乗りたいと思いだ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本怪談大全 第一巻 女怪の館
  • 国書刊行会
  • 1995(平成7)年7月10日