いっしょにあるくぼうれい
一緒に歩く亡霊

冒頭文

「老媼茶話」には奇怪な話が数多(たくさん)載っている。この話もその一つであるが、奥州の其処(あるところ)に甚六と云う百姓があった。著者はその人となりを放逸邪見類なき者也と云っている。兎に角冷酷無情の男であったらしい。 その甚六に一人の姉があった。その姉は早く夫に死なれて一人の女(むすめ)を伴れて孀(やもめ)ぐらしをしていたが、これも病気になって秋の陽の入るように寂寞として死んで往った。姉の子

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の怪談
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1985(昭和60)年12月4日