「七人御先(みさき)」 高知市の南に当る海岸に生れた私は、少年の比(ころ)、よくこの御先の話を耳にした。形もない、影もない奇怪な物の怪(け)の話を聞かされて、小供心に疑いもすれば、恐れもしたものだ。 「彼(あ)の人は、七人御先に往き逢うたから、病気になった」 外出していて不意に病気になったり、頓死したりする者があると、皆それを七人御先の所為にした。ある者は、その七人御先を払うため