かいそう
怪僧

冒頭文

官軍の隊士飯田某は、五六人の部下を伴(つ)れ、勝沼在の村から村へかけて、潜伏している幕兵を捜索していた。それは、東山道から攻めのぼった官軍を支えようとした幕兵を一戦に破ったあとのことであった。 夕方になって唯(と)ある森の陰に小さな寺を見つけた。飯田はその寺で一泊するつもりで、夕陽の光を浴びて寺の方へ往った。山門の柱も朽ちて荒れた寺であった。鐘楼には釣鐘も見えなかった。 部下の

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の怪談
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1985(昭和60)年12月4日