せんぷう
旋風

冒頭文

秋篠寺を出て、南へとぼとぼと西大寺村へ下つて來ると、午過ぎの太陽が、容赦もなく照りつけるので、急にくらくらと眩暈(めまひ)がしさうになつて來た。それに朝夙くから午過ぎの今時分まで何一つ口へ入れるではなし、矢鱈に歩き通しに歩いたので、腹が空いて力が無くなるし、足は貼りつけられたやうに重くるしい。 御陵山は白髮染の媼さんのやうに、赤ちやけた山の素肌に、黒ずんだ松の樹がばらばらに散らばつて見え

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「新小説」1908(明治41)年10月

底本

  • 現代日本紀行文学全集 西日本編
  • ほるぷ出版
  • 1976(昭和51)年8月1日