ゆがしまのすうじつ
湯ヶ島の数日

冒頭文

十二月二十七日  湯ヶ島へ出立。 すっかり仕度が出来上ったが余り時間がない。俥でことこと行くよりはと、フダーヤ老松町の通へ空車を捕えに出た。早朝なのでなし。かえって、一台だけ来た人力車にのって先へ出かけ、自分二十分も待たされて出発。列車は十時五十分に東京駅を出るというのに、飯田橋で時計を見ると、十五分しかない。自働車にのりかえ、やっと車室に乗込んだら直ぐ発車という程度で間に合った。

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸時報」1926(大正15)年

底本

  • 宮本百合子全集 第三十巻
  • 新日本出版社
  • 1986(昭和61)年3月20日