あるひ
或る日

冒頭文

降誕祭(クリスマス)の朝、彼は癇癪を起した。そして、家事の手伝に来ていた婆(ばあや)を帰して仕舞った。 彼は前週の水曜日から、病気であった。ひどい重患ではなかった。床を出て自由に歩き廻る訳には行かないが、さりとて臥(ねた)きりに寝台に縛られていると何か落付かない焦燥が、衰弱しない脊髄の辺からじりじりと滲み出して来るような状態にあった。 手伝の婆に此と云う落度があったのではなかっ

文字遣い

新字新仮名

初出

「愛国婦人」1925(大正14)年5月号

底本

  • 宮本百合子全集 第三十巻
  • 新日本出版社
  • 1986(昭和61)年3月20日