ふたつのみじかいはなし
二つの短い話

冒頭文

笛吹きとプカ 昔、ガルウェーのダンモーアと云う処に一人の半馬鹿がいました。彼はひどく音楽が好きでしたが、たった一つの節しか覚えることが出来ませんでした。その一つの節は「黒坊のいたずら小僧」と云うのでした。 村の人達は彼をからかって遊ぶのが好きでしたから、半馬鹿はよく皆から沢山のお金を貰いました。或る晩、この半馬鹿の笛吹きは舞踏のあった家から自分の家に帰ろうとしていました。彼は少

文字遣い

新字新仮名

初出

「週刊朝日」1924(大正13)年4月20日号

底本

  • 宮本百合子全集 第三十巻
  • 新日本出版社
  • 1986(昭和61)年3月20日