しょうじきノート
正直ノオト

冒頭文

正直に言うことに致しましょう。私は、これから書こうとする小説、または、過去に於いて書いた小説の意図、願望、その苦心を、あまり言いたくないのです。それは、私の虚傲(きょごう)からでは、ないと思うのです。書いてみて、それが相手に受け入れられなかったら、もうどう仕様もないことですし、これから書こうと思っている小説を、どんなにパッションもって語っても、いまのところ私は、そんなに優秀の大傑作、書けないのが、

文字遣い

新字新仮名

初出

「帝国大学新聞」1939(昭和14)年5月15日発行

底本

  • 太宰治全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年6月27日