かすかなこえ
かすかな声

冒頭文

信じるより他は無いと思う。私は、馬鹿正直に信じる。ロマンチシズムに拠(よ)って、夢の力に拠って、難関を突破しようと気構えている時、よせ、よせ、帯がほどけているじゃないか等と人の悪い忠告は、言うもので無い。信頼して、ついて行くのが一等正しい。運命を共にするのだ。一家庭に於いても、また友と友との間に於いても、同じ事が言えると思う。 信じる能力の無い国民は、敗北すると思う。だまって信じて、だま

文字遣い

新字新仮名

初出

「帝国大学新聞」1940(昭和15)年11月25日発行

底本

  • 太宰治全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年6月27日