ぎょふくき
魚服記

冒頭文

一 本州の北端の山脈は、ぼんじゅ山脈というのである。せいぜい三四百米(メートル)ほどの丘陵が起伏しているのであるから、ふつうの地図には載っていない。むかし、このへん一帯はひろびろした海であったそうで、義経(よしつね)が家来たちを連れて北へ北へと亡命して行って、はるか蝦夷(えぞ)の土地へ渡ろうとここを船でとおったということである。そのとき、彼等の船が此の山脈へ衝突した。突きあたった跡がいま

文字遣い

新字新仮名

初出

「海豹」1933(昭和8)年3月号

底本

  • 晩年
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1947(昭和22)年12月10日、1985(昭和60)年10月5日70刷改版