すながき
砂がき

冒頭文

十字架 ”神は彼を罰して 一人の女性の手に わたし給へり” ああ、わが負へる白き十字架。わが負へる柔き十字架。人も見よ。わが負へる美しき十字架。    心飢ゆ ひもじいと言つては人間の恥でせうか。垣根に添うた 小徑をゆきかへる私は決して惡漢のたぐひではありませんよその厨(くりや)からもれる味噌汁の匂が戀しいのです。    故郷 いい年をしてホームシツクでもありますまい。だが、泥棒でさへどう

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 砂がき
  • ノーベル書房株式会社
  • 1976(昭和51)年10月5日