らくごかたち
落語家たち

冒頭文

金車亭が経営不振の果てに、浪花節に城を明け渡したといふ。市内の色物席が次から次へとつぶれて行くと聞く時、この浅草の古い席も時代の波に押されて同じ悲運に際会したのかと思へば、私個人ここに色んな記憶があるせゐも手伝つて何とも寂しい感じがする。 浪花節になつてから内部を改築したとのことであるが、腰かけにでもしたのだらう。あの話の聞きいい——市内のどの席よりも私はここの雰囲気を愛してゐた。どこか

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻29 落語
  • 作品社
  • 1993(平成5)年7月25日