たきぐちにゅうどう
滝口入道

冒頭文

第一 やがて來(こ)む壽永(じゆえい)の秋の哀れ、治承(ぢしよう)の春の樂みに知る由もなく、六歳(むとせ)の後に昔の夢を辿(たど)りて、直衣(なほし)の袖を絞りし人々には、今宵(こよひ)の歡曾も中々に忘られぬ思寢(おもひね)の涙なるべし。 驕(おご)る平家(へいけ)を盛りの櫻に比(くら)べてか、散りての後の哀れは思はず、入道相國(にふだうしやうこく)が花見の宴とて、六十餘州の春

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「読売新聞」1952(昭和27)年4月16日~5月30日

底本

  • 瀧口入道
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1938(昭和13)年12月2日、1968(昭和43)年10月16日第32刷改版