京橋の新富町(しんとみちやう)に、小松将棋所といふのがあつた。こゝの主人は小松三香(さんきやう)と云ひ、将棋は四段であつたが、ある日、わたしがたづねて行くと、 「ちやうどいゝところへきた。——品川に川島楼といふ貸座敷があるが、その飯塚といふ主人が将棋が好きで、そこへ行くと飲ましてくれるし、また褒美(ほうび)にありつけるかも知れぬ。もし、暇だつたら行つてみたらよからう。」と、いふ。 酒を