すてご
捨児

冒頭文

「浅草(あさくさ)の永住町(ながすみちょう)に、信行寺(しんぎょうじ)と云う寺がありますが、——いえ、大きな寺じゃありません。ただ日朗上人(にちろうしょうにん)の御木像があるとか云う、相応(そうおう)に由緒(ゆいしょ)のある寺だそうです。その寺の門前に、明治二十二年の秋、男の子が一人捨ててありました。それがまた生れ年は勿論、名前を書いた紙もついていない。——何でも古い黄八丈(きはちじょう)の一つ身

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮」1920(大正9)年7月

底本

  • 芥川龍之介全集4
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1987(昭和62)年1月27日