ゆうれいのしばいみ
幽霊の芝居見

冒頭文

欧洲大戦の時、西部戦線にゐた英軍の塹壕内では、死んだキツチナア元帥が俘虜になつて独逸にゐるといふ噂が頻りにあつた。前線で俘虜になつた独逸兵のなかには、伯林の俘虜収容所で怖しく背の高い元帥の後姿を見かけたといふものが少くなかつた。オウクネエ島附近で溺死した元帥が蘇生つた筈もないが、それでも誰も見た、彼も見たと言ふからには、これもまんざら嘘だとばかしは言はれない。 去年オスカア・ワイルドが巴

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻64 怪談
  • 作品社
  • 1996(平成8)年6月25日