てじなしとばんざん
手品師と蕃山

冒頭文

手品といふものは、余り沢山見ると下らなくなるが、一つ二つ見るのは面白いものだ。むかし、備前少将光政が、旅稼ぎをする手品師の岡山の城下に来たのを召し出して、手品を見た事があつた。 一体大名や華族などといふものは、家老や家扶たちの手で、始終上手な手品を見せつけられてゐるものなのだが、備前少将は案外眼の明るい大名だつたので、用人達もこの人の前では、 「二二が六。」 と手品の算盤珠(そろ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻7 奇術
  • 作品社
  • 1991(平成3)年9月20日