あらし |
| 嵐 |
冒頭文
子供らは古い時計のかかった茶の間に集まって、そこにある柱のそばへ各自の背丈(せたけ)を比べに行った。次郎の背(せい)の高くなったのにも驚く。家じゅうで、いちばん高い、あの子の頭はもう一寸四分(ぶ)ぐらいで鴨居(かもい)にまで届きそうに見える。毎年の暮れに、郷里のほうから年取りに上京して、その時だけ私たちと一緒になる太郎よりも、次郎のほうが背はずっと高くなった。 茶の間の柱のそばは狭い廊下づたい
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 嵐
- 岩波文庫、岩波書店
- 1956(昭和31)年3月26日、1969(昭和44)年9月16日第13刷改版