よあけまえ 01 だいいちぶじょう
夜明け前 01 第一部上

冒頭文

序の章 一 木曾路(きそじ)はすべて山の中である。あるところは岨(そば)づたいに行く崖(がけ)の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曾川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入り口である。一筋の街道(かいどう)はこの深い森林地帯を貫いていた。 東ざかいの桜沢から、西の十曲峠(じっきょくとうげ)まで、木曾十一宿(しゅく)はこの街道に添うて、二十二里余にわたる長

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 夜明け前 第一部上
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1969(昭和44)年1月16日